株式会社東京地図研究社様2024年01月18日
社内外のコラボレーションを通じて、新たな価値を生み出せる組織づくりを
株式会社東京地図研究社
総合技術部 部長/竹下 健一様
企画営業部 広報販売グループ/有賀 夏希様
60年以上の歴史がある東京地図研究社。培ってきた強みや技術を活かし、新たなステージに向かおうとしています。その第一歩として「自社のビジョンを考えるきっかけを掴む」ための社内イベントを実施。弊社にてプログラム設計をお手伝いさせていただきました。東京地図研究社にとって初めてとなる本取り組み。チャレンジの背景やその後の変化を伺います。
※プログラムの一環として、急成長しているIT企業様5社の講演を実施。伺った事業内容や製品サービスを材料に、協業の可能性を探り、新たなサービスに繋がるアイデアをワークショップでアウトプットしました。ご協力いただきました皆様、誠にありがとうございました。
――まずは、東京地図研究社さんについて教えて下さい。
竹下様: 1958年の創業以来、地形図、航測図、ロードマップやガイドマップ等の出版関係の地図、更にGIS(地理情報システム)の基盤となる情報を作成する調査・測量・地図編集・データ作成等を通じ、時代とお客様のニーズに合った地理情報を提供してきました。創業者が国土地理院の前身となる陸地測量部出身で、国土地理院から発注される地図を職人が手で描くというのが事業のスタートでした。
しかし近年は、デジタル化の影響で書店に並ぶ地図は少なくなり、我々も地図を使って新たな商品サービスをつくったり、地図を使った分析をしたり、事業のベクトルが変わってきています。現在はデータアナリストやコンサルタントという立ち位置でのお仕事も増えてきました。私が入社した20年前は、業界の過渡期。既に従来の手描きよりもデジタル作業が多くなっていて、現在は地図自体を作る業務に携わることはかなり少なくなっていると思います。
有賀様:現在は、皆さんが思い浮かべるような地図はほぼ作っていないという感覚です。紙地図を扱う仕事で印象に残っているのは、国土地理院から発注された「100万分の1地図」の調製業務。文字通り、国土地理院にて刊行されている小縮尺100万分の1の地図を更新する仕事です。いつもはパソコンにデータを放り込むだけで地図ができていたのに、これは手描きの延長上のような仕事で、難しくて。
でも昔の職人さんたちはこんな風に作業をしていたんだな、と思いながら取り組んで、職人さんの端くれになれた気がした仕事でした。当時の上司に「有賀さんの人生の中で、こういう『ザ・地図』のような仕事は今後ないかもしれないね。」と言われて。その時はしっくりきていなかったのですが、今思うとその通りでしたね。貴重な経験をさせてもらいました。
竹下様:この30年程で、我々の仕事は大きく変化してきましたが、年に何回かは地図を作るチャンスがあって。展示会への出品、自社のノベルティ制作等、自社のルーツが途絶えてしまわないよう、地図作りに携わることのできる機会は今でも大切にしています。
――創業時からのDNAを受け継ぎながら、時代に沿って変化してきた歴史を感じます。
どのような社風がそれを可能にしているのでしょうか?
有賀様:チャレンジを後押ししてもらえる環境だと思っています。上司との距離も近く、若手の意見にも耳を傾け、適切に反映しようとしてくれているのを感じますし、困難やチャレンジが必要なことが立ちはだかっても、「万が一の時は自分が何とかするから、やってみよう。」と後押ししてくれます。年次や役職に関わらず、全員が何かしらの部分で活躍できる、活躍のチャンスを与えてくれる会社だと思います。
竹下様:スキルを伸ばすために、あらゆることにチャレンジしていこうという風土があります。初めての仕事はおっかなびっくり受けることもありますが、経験で何とかなりそうだ、勉強すればできそうだ、という判断軸でストライクゾーンを広げていく。
他社と一緒のことができても仕事はいただけないので、まずはチャレンジし、最後まで責任をもってやり遂げることが大事だと考えています。その積み重ねで、お客様からは東京地図研究社は最後までやり切ってくれる会社だと、信頼をいただけていると思っています。
――今回のような社内イベントは初めての取り組みだと伺っています。
企画の背景や弊社へ依頼いただいた経緯について教えてください。
有賀様:弊社は今年63期を迎えました。新しいことによりチャレンジしたり、社外へ積極的に発信していこうという気運はありましたが、社員皆で一つのテーマについて話し合ったり、新しいことを生み出すための機会は設けていなくて。まずは実践し、組織の一体感を出せたら良いのではと思い、毎年行っていたレクリエーションのイベントの場を活用しようと考えました。また、社内で閉ざすのではなく、経験のあるfulloutさんにお願いすることで、外部視点も取り入れながら成長していきたい、という想いがありました。
イベントでは、弊社と接点のある会社さんを数社お招きし、まずはその会社の業務を紹介いただき、その上で協業内容や新たなサービスを考えるワークを行いました。日常業務だけでは、外部の方とお会いすることはほとんどないメンバーもおりますので、このような機会は私たちにとって刺激になります。きっと社員皆が何かしらの意見を持っているはずで、それを発信し合うことで新しいことが生まれるのではないかという期待もありました。
竹下様:他社さんと協業して成果を出していこうという経営方針は出ていたものの、起爆剤やきっかけがなくて。今回のように、自分たちで新たなサービスを考えるという体験は今までは無かったものです。初体験のメンバーがほとんどで、必死になって考えましたね。
とにかく、たくさんアイデア出たのが良かった。若手からベテランまで、皆の意見を出し合って。現実的にマネタイズできるかは一旦置いておいて、まずは世の中への貢献を考える。自分たちで考えること自体に価値があったと思っています。
――ワーク中は活発な意見交換がなされていて、皆さんのチャレンジしようとする姿勢が伝わりました。
イベント後、社内の変化はありましたか?
有賀様:前までは自分の仕事だけに向き合っていることが多かったのですが、積極的に他社さんのHPやプレスリリースを見たり、社員の意識が外に向かい始めているのを実感しています。例えば、弊社では外部イベントに参加した際に報告書を書くことになっているのですが、「この会社さんとはこんな領域で協業できそうだ」というような、一歩踏み込んだ報告をよく見かけるようになりました。
――目に見える変化があったのは嬉しいですね。最初にご相談いただいた時から、新方針となる「協業」というキーワードはよくお伺いしていました。是非、実現していただきたいです。
有賀様:弊社は形のある商品を持っているわけではないので、待ちの姿勢では成長していけません。新しいサービスを生み出し、お客様にとって役立つものになれば、私たちの未来も見えてきます。しかし、今の知識や技術だけではできないこともある。そこでGISや位置情報の力と他社さんの力を掛け合わせたら、わくわくするものが生まれるんじゃないかなと考えています。
竹下様:毎年同じ仕事をいただいている時代もありましたが、現在、そのような仕事はほぼありません。単純仕事が海外に流れていったように、AIで代替できることも多くなっている。我々も変化しないと生き残れない、という危機感がありました。同規模・同業種の他社さんが新たなサービスを展開し始めているのも刺激になって、我々もできるはずだと。
しかし、技術だけではなくアイデアも必要です。東京地図研究社ならではのアイデアで、お客様、協業先、仲間たちを巻き込んでサービスを生み出していきたい。自分たちだけでできることには限りがあります。GISや位置情報の力を欲している異業種の会社さんとのコラボレーションで、世の中を震撼させるような技術が生まれ、ヒットすることもあるかもしれません。より良い世の中にしていくために、必要な存在で在り続けたい。今、変化のチャンスが来ていると考えています。
――イベントを実施してみて、良かった点や印象に残っている点はありますか?
竹下様:あらゆることが初挑戦だったなと。イースト株式会社さんのオフィスという外部会場で実施させていただき、全社員で、同じ場所で同じ時間を過ごしたことは、弊社にとっては大きな出来事でした。
今回、5社の皆様に講演いただきましたが、直接お話を聞けて程よい緊張感と熱量を体感することができました。講演いただいた皆様の姿勢に胸が熱くなり、その想いに応えたいと思いましたし、感謝しています。リアルの場ならではの濃い時間でした。現在、イベントでのアウトプットからもう少し踏み込んで、具体的なサービスを考えようとしています。講演いただいた会社さんと弊社の社員同士で改めてブレストをしようか、という話も出ています。
――リアルイベントならではの、たくさんのメリットを享受できた場でしたね。
今回の体験を日常業務に活かしていただけると嬉しいです。最後に、今後の組織づくりについてお聞かせください。
竹下様:やはり、変化の必要性は感じています。まだ明確な答えはないのですが、「こう在るべき」としっかり言えるような組織をつくりたいですね。毎年、新入社員が入ってきますが、60代の社長、40代の私とは考え方が違います。皆が意見してくれることで私たちも考えるきっかけになるので、皆が意見を出しやすい環境づくりが必要だと考えます。
先日、PLATEAUという国土交通省が進める3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化のリーディングプロジェクトをテーマに、アイデアソンを社内で実施しました。PLATEAUの知識は必須ではなく、勉強も兼ねて実施しました。まだビジネスに繋がってはいませんが、このような機会を設けることで、世の中を知り、自分たちに足りないものが見えてくる。たくさんのアイデアが飛び出したのはすごいなと思いました。noteやX(旧Twitter)で発信をしているので是非見てみてください。まだまだネタがあるので、今後も発信していきますし、これも協業のきっかけになれば良いと思っています。
――今後、弊社に期待することがありましたらお聞かせください。
有賀様:弊社のミッション・ビジョン策定のサポートをお願いしたいと考えています。今回、fulloutさんのプログラムがあったから、活発に意見が出る場となりました。皆が意見を出しやすい環境をつくり、会社としての在るべき姿を決める。今回のように現場主導で実現できたら良いと思っています。
竹下様:近年、新卒採用では自分たちが思ったような結果が得られていないのが現状です。自社の魅力をしっかり伝えながら、学生さんに寄り添い、考えるサポートができればと考えています。強い採用は会社の未来を支えることに繋がりますので、テコ入れしたいですね。私たちは地図のプロですが、採用のプロではありません。組織・人事周りのプロが並走してくれることは自信になります。お力添えいただけると嬉しいです。